3月の行事に「ひな祭り」があります。
ひな祭りは女の子の日。
押し入れにしまってある雛人形を取り出し、親子で並べる人も少なくありません。はじめてのひな祭りのために、雛人形を買いに走る人もいるでしょう。
雛人形を飾るときに雛人形の首が外れることもあります。
「ヒィイイイ!!」
事件は会議室で起きているのではない。現場で起きている。一瞬、凍りつく現場ですが、親は子どもに首の取れた雛人形を見せないように再び首をつけます。
「夜中にこの雛人形たちが動き出すかもしれない…」
「気がついたら髪の毛が年々伸びているような気がする…」
そんな恐怖の現象をイメージしないように頭の隅に隠しながら大人はひな祭りを楽しんでいます。
親子・親戚で雛人形を囲みながら歌う人もいますが、楽しい時間に歌う「唄」であるにも関わらず、その歌詞にはある物語が潜んでいるのです。
そう、悲しくも怖い歌が…。
おだいりさ~ま~とおひなさま~♪ひな祭りは女の子の日パラ。ぬぉ?悲しいお話パラ?どういうことパラ?
ひな祭りの歌(歌詞)が嘘!?間違い?
押し入れにしまっていた人形を出して歌を歌いながら祝う。
その歌は「うれしいひなまつり」♪
実はその歌詞には秘密が隠されています。
誰しも一度は聞いたことがある「うれしいひなまつり」という曲ですが、実はひな祭りの歌の歌詞には間違いがあります。
- あかりをつけましょ ぼんぼりに
お花をあげましょ 桃の花
五人ばやしの 笛太鼓
今日はたのしい ひな祭り - お内裏様と おひな様
二人ならんで すまし顔
お嫁にいらした ねえさまに
よく似た官女の 白い顔 - 金のびょうぶに うつる灯を
かすかにゆする 春の風
すこし白酒 めされたか
赤いお顔の 右大臣 - 着物をきかえて 帯しめて
今日はわたしも はれ姿
春のやよいの このよき日
なによりうれしい ひな祭り
2番目の歌詞の秘密
普段、何気なく歌っているひなまつりの歌詞ですが、本当の意味を知っていますか?
例えば2番目の歌詞を見てみましょう。
「お内裏(だいり)様とおひな様~二人並んですまし顔~」
この歌詞からどのようなイメージをしているでしょうか?
「ひな壇の一番上にいる二人の顔がすました顔である」このように思っているのではないでしょうか?
実は「内裏」とは、「天皇の私的区域」のことを指しています。また、「御所・禁裏・大内」などの異称も存在します。
紫宸殿と呼ばれる場所がありますが、天皇元服や立大使、節会などの儀式が行われるところです。雛人形は紫宸殿で行われる天皇と皇后の結婚式を模したお飾り。
つまり…。
- お内裏様 = 男のひな人形
- おひな様 = 女のひな人形
ではありません!
お内裏様の意味は「男のひな人形と女のひな人形の両方を指す言葉」。また、おひな様の意味は「ひな人形の全てを指している言葉」が正しい意味です。
なぜ間違えた認識で広まってしまったのでしょうか?
その理由は簡単です。
「二人並んですまし顔」という歌詞があるため。
どう考えても「間違えて覚えてね」というトラップ!後世の人々はまんまとハマってしまいました。
正しい意味
- お内裏様 …上段2人形
- おひな様 …人形のすべて
3番目の歌詞の秘密
3番目の歌詞の中にも秘密があります。
「すこし白酒めされたか~赤いお顔の右大臣」
っという歌詞がありますが、右大臣(若い人形)の顔は白い顔であり、赤い顔なのは左大臣(老人の人形)になるのです。
左右の顔の色が間違い
ひな祭りの歌に隠された悲しくも怖い物語
楽しい歌であるはずの「うれしいひなまつり」が、実は悲しい歌詞であることはあまり知られていません。
2番の歌詞に「お嫁にいらした姉さまに よく似た官女の白い顔」という一文があります。「官女」の意味は宮中に仕える女官のこと。
ここで疑問が!
お雛様の歌であるにも関わらず、なぜお姉さんを女雛に似ていると言わないのでしょうか?
歌っているものは、お姉さまを宮中に仕える女官であるといえるほど尊敬をしていることが伺えます。
「なぜ「女雛(お姫様)」ではないの?」
この曲を制作した作詞者は、サトウハチローという人物です。実はこの歌は、実の姉へ贈った「鎮魂歌」であるという説があります。鎮魂歌(ちんこんか)とは、死者の魂を鎮めるために歌うもの。レクイエムとも呼ばれています。
彼の姉は不運にも亡くなってしまったのです。
サトウハ チローのお姉さんは、嫁入り前の18歳という若さで結核を患い他界してしまいました。サトウハチローは雛人形をみるとお姉さんを思い出して恋しいと思っていたのです。そのため、あえて官女の白い肌がお姉さんに似ていると表現したと言われています。
「白い肌」は美しさの象徴。
当時は顔を白塗りにするほど美しいとされていました。現代でも京都の芸者さんは顔を白く塗っています。そして「志村けんのバカ殿様」も顔が白いです。
白い肌は美しい。
サトウハ チローのお姉さんは、自慢するほど綺麗な人だったのでしょう。そして亡くなったショックも大きかったことが伝わります。
ひな祭りの歌には嫁ぎ先が決まった直後に結核にかかり亡くなってしまった姉とその事実に悲しむ弟の気持ちが込められています。
この歌詞は「怖い」と言われていますが、不運にも亡くなった死者を想う気持ちとは反比例して、このような感情を抱かせているのかもしれませんね。
まとめ ひな祭りの歌には悲しい話が隠されている
「白い肌」は美しさの象徴といわれているので、お姉さんは自慢するほど綺麗な人だったと想像ができます。
ひな祭りの歌には、「嫁ぎ先が決まった直後に、結核にかかり、亡くなってしまった姉」が隠されているのです。
「うれしいひな祭り」のタイトルとは対照的。
ひな祭りのうたを歌いながら「ひなあられ」をたくさん食べましょう!