ヤマトヌマエビは、ミナミヌマエビとは違い、「増えない・コケ取り能力が高い」ことでも知られています。ふと、ヤマトヌマエビを繁殖させてみたいなと思いました。
その結果…。
ヤマトヌマエビのコケ取りはすごいパラ。ウィローモスまでなくなる勢いパラ。ヤマトヌマエビを増やしたいパラ!繁殖させたいパラ!
ヤマトヌマエビを繁殖させる方法
ヤマトヌマエビの繁殖は可能だけど難しいです。育てるために汽水域の環境が必要です。
ヤマトヌマエビの繁殖は、手間がかかる上に成長させることが難しいです。繁殖には汽水環境が必要で、着底するまでの幼生期は特に死にやすいです。
しかし、ヤマトヌマエビはミナミヌマエビ同様に、抱卵する機会が多く繁殖させるチャンスの確率は高いです。
実際に、ヤマトヌマエビの繁殖に成功している人もいます。繁殖のやり方を確認していきましょう。
雄雌のヤマトヌマエビを揃える
雄と雌がいなければヤマトヌマエビを繁殖させることは不可能です。まずは、ヤマトヌマエビの雄と雌を用意しましょう。
雌が7匹、雄が3匹いれば抱卵率があがります。雌を多めにいれるのがポイントです。
- 雄 …身体が小さめで、点々とした模様になります。
- 雌 …身体が大きく、点々とした横棒模様が特徴です。
オス「・ ・ ・ ・」
体長「3~4cm」
メス「・ - ・ - ・ -」
体長「4~5cm」
水温を20度以上へ
水温が低いとヤマトヌマエビは繁殖行動をとりません。水槽の水温を20度以上にあげましょう。
雄が雌の背中に乗る繁殖行動
成熟した雌は脱皮をすると性フェロモンをプンプンと出し、この匂いを嗅ぎつけて、水槽にいる雄たちが雌のもとに大集合します。
雄が雌の背中に乗り、「おんぶ」状態となるためすぐにわかります。相性があえば卵が産まれます。
雌が卵を抱卵
雌のお腹に卵ができました。一度に抱卵する数は、500個~2000個程度と言われています。
水槽の中で2000個以上のヤマトヌマエビが誕生すると思うとすごいことになりそうですが、飼育環境で大人にまで成長するのは極わずか。
野生化でもヤマトヌマエビの赤ちゃんは魚などの格好の餌になるため、大人になるのは一握りになります。
抱卵してから孵化が始まるまでは2週間~4週間かかりますが、水温が低いと遅く、高いと早く成長します。
汽水環境の準備
ヤマトヌマエビを成長させるには汽水域が必要です。抱卵を確認したら汽水環境を準備しましょう。
ヤマトヌマエビの赤ちゃんである「ゾエア」を人口餌で育てるのも良いですが、食べ残しがあると水質が悪化してしまうため、2週間ほど前からゾエアを成長させる水槽を準備して、そこに微生物を発生させておくのです。
人口餌と違い水質の悪化も緩やかになるため、水を入れ替える必要はありません。ウィローモスなども入れておくと良いでしょう。
ウィローモスが枯れますが、微生物の食べ物になります。苔の類や微生物を発生させる為に1灯~2灯24時間つけっぱなしにします。
汽水の作り方
汽水の作り方は、海水の70%を用意します。50%の汽水環境でも成長するようですが、汽水の気化により水槽内の塩分濃度が変わってくる可能性があります。成功率が高い汽水70%が良いと思います。
海の水を持ってきて、水道水で割る方法も良いですが、海の細菌やゴミ、生物をろ過してから水槽にいれる必要があります。
生物が入るとヤマトヌマエビのゾエアが餌になってしまいます。
また、海水の場合は河口が近くにあれば、汲み取った場所の塩分濃度が分からない可能性が高いです。その点、市販されている人口の「海水の素」を使用すると安心できます。
そして、ウィローモスの他にもフィルターの底に溜まる「浮泥」を入れておきましょう。浮泥には多くの微生物が含まれています。ゾエアの餌にはもってこいです。
抱卵したヤマトヌマエビの隔離
魚などと混泳している場合は、抱卵したヤマトヌマエビを隔離します。隔離する場所は、ゾエア用の水槽ではありません。別の水槽を用意します。
ただし、注意することがあり、水質が極端に違うとヤマトヌマエビはすぐに脱卵してしまう可能性が高いです。本水槽の水をそのまま隔離用の水槽に入れて、ヤマトヌマエビを移動させます。
移動するタイミングですが、抱卵する直前(数日前)が良いでしょう。見極めが難しですが、2週間から4週間の間に生まれるため抱卵と水温を確認しながら1つの目安にして観察をします。
ゾエアの数と水槽のサイズ
ヤマトヌマエビからゾエアがたくさん産まれました。親のヤマトヌマエビは本水槽に戻して大丈夫です。
産まれたゾエアは1日~2日以内に用意しておいた水槽に移してください。3日以上経つと次第に死んでいき、その数がみるみる減っていきます。
また、飼育水1Lに対してゾエアを飼育できる数は最大40匹程度と言われています。その理由は定かではありませんが、餌の問題があるかもしれません。一応、参考程度に覚えておきましょう。
ゾエアの飼育方法
いよいよゾエアの飼育開始です。その前に確認しましょう。上部式フィルターや外部式フィルター、外掛けフィルターなどは使えません。
ゾエアがフィルターに巻き込まれてしまうため、フィルターを使うならスポンジフィルターになります。
水流もほどよく最適です。また、排水部分を水面の上から落とすようにすることで酸素の供給にも役立ちます。
照明は、ゾエアを入れてから10時間ほどにしましょう。エビは高温に弱い生き物です。水温の上昇には気を付けてください。リフトアップできる照明器具ならリフトアップした方が良いです。
ゾエアの変態成長と着底
ゾエアの幼生は30日~45日ほどで稚エビに変態します。ゾエアの頃は死亡率が最も高く、この時期を乗り切り変態した稚エビは生き残る可能性が高くなります。
ゾエアから5回程脱皮をすると3mmほどに成長し、身体に赤みを帯びてきます。そして、遊泳力がアップ!さらに成長するといよいよ着底する姿を見ることができます。
「クララが立った」・「赤ちゃんがはじめて立った」ような感動を覚えるでしょう。9回程の脱皮をするとすっかりエビの姿になり着底します。
稚エビを淡水に戻す
着底した稚エビを淡水環境に移動します。汽水域から淡水域にかえる際、ならしが必要です。
身体が赤いときはもうしばらく汽水環境で育てましょう。赤みが薄れてきたら(着底から2週間ほど?)移動させ、後は成長してくれるのを見守りながら育てます。
ただし、本水槽に戻すのは魚が混泳していない場合に限ります。5mm程度と小さな稚エビなので、魚の餌になってしまいます。大きさが1㎝を超えるようになると安心です。
ヤマトヌマエビを繁殖してみた結果、大失敗…
ヤマトヌマエビを実際に繁殖させてみようと思い実験。抱卵は順調です。親ヤマトヌマエビも元気な子を産む気まんまんです。
ゾエア水槽を準備しました。2週間ぐらいで”この世の終わり”みたいな水槽になっています…。微生物はたくさんいそうです。
ゾエアが誕生しました。壁についている白い粒が全部ゾエアです。数にして数千匹はいます。
そして、上記の育成水槽にいれたのは良いものの、日に日にゾエアの数が少なくなり最後には絶滅してしまいました。
実は、この水槽は海の近くで取ってきた海水を使用しています。塩分濃度を図らずに70%になるように割ったためうまく育ちませんでした。初歩的なミス…。
河口が近くにある場所のため、塩分濃度が最初から100%の海水ではなかったという致命的な可能性があります。原因は恐らくこれ…。比重計で計っておくべきでした。
「海水の素」ならうまくいっていたかもしれません。
そもそも出だしから失敗してしまったものの、ヤマトヌマエビの繁殖は難しいことを実感しました。ちなみに、本水槽に戻っていた親ヤマトヌマエビはまた抱卵をしていました。
まとめ ヤマトヌマエビの繁殖は「海水の素」が便利
ヤマトヌマエビは淡水環境で増えないことがアクアリウムの利点でもあります。しかし、アクアリウムは生物を繁殖させる楽しみもあるので、挑戦してみてもよいと思います。